【ジョーカー】ホアキン・フェニックスの腕時計 ~Actor’s Watch #94~

映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第94弾の今回は、「ホアキン・フェニックスの腕時計」をお送りします。

*出典元:https://www.esquire.com/

心優しき道化師のアーサーが不条理な社会の中で罪を犯し、やがて精神のバランスを崩し、妄想に囚われた恐ろしきテロリストになっていく『ジョーカー』(2019)。本国ではもちろん、日本でも大ヒットを記録した本作での鬼気迫る演技で、見事アカデミー主演男優賞の栄冠に輝いたホアキン・フェニックス。その演技に注目された方も多いのではないでしょうか。

若い頃は23歳で急逝した二枚目俳優、リヴァー・フェニックスの弟として認識されることが多かった彼も、50代も間近となった今では、数々の名作・傑作に名を刻むハリウッドの名優として知られる存在となっています。特に『ジョーカー』に代表される、繊細さと凶暴性が同居するアンビバレンツな役柄を得意とするホアキン・フェニックス。

今回は、彼が劇中で着用した腕時計に注目して参ります。

裏切り者

THE YARDS(2000)

*出典元:https://m.imdb.com/

仲間をかばって服役していたレオ(マーク・ウォールバーグ)は、女手ひとつで育ててくれた母を喜ばすため、真面目な仕事に就くことを決意する。出所後、叔父が経営する大手企業に入社したレオ。そこにはレオの悪友だったウィリー(ホアキン・フェニックス)が働いており、彼は社内のホープとして活躍していた。

ある日、ウィリーに連れられて地下鉄工事の入札に立ち会ったレオは、企業と政治家の汚職が渦巻く談合の現場を目の当たりにする。彼らに任された仕事は、公共事業の落札を成功させるための裏工作だった。ある日、レオとウィリーは競合による落札を妨害するため、ライバル企業の車庫に忍び込み、車両に細工をしようとする。しかしそこで彼らの人生を大きく狂わせる事件が発生してしまう、、、

*出典元:https://www.chronomaddox.com/

実際に起きた汚職事件を基にした社会派ドラマ『裏切り者』(2000)。公共事業の裏取引や妨害工作に巻き込まれた青年の決断を描いた本作では、主人公の悪友であり、将来を嘱望される同僚、ウィリー役をホアキン・フェニックスが演じています。劇中で彼が身に着けているのは、ロレックス デイトジャスト(Ref.不明/参考画像)と思われるジュビリーブレスレットの腕時計。

腕時計がアップになるシーンが無く、モデルの詳細は不明ですが、ゴールドとステンレスのコンビモデルではないかと言われています。経営者の片腕として汚れ仕事を請け負い、その羽振りの良さでシャーリーズ・セロン演じるレオの従妹、エリカから好意を寄せられるウィリー。上質なスーツにロレックスというエグゼクティブ感と、請け負っている汚れ仕事のギャップが、いかにも「個性派」ホアキン・フェニックスらしい屈折を感じさせてくれます。

バッファロー・ソルジャーズ/戦争のはじめかた

BUFFALO SOLDIERS(2001)

*出典元:https://twitter.com/

冷戦終結も間近で緊張感に欠ける、西ドイツのシュツットガルト米軍基地。補給部隊に所属するエルウッド(ホアキン・フェニックス)は、上官であるバーマン大佐(エド・ハリス)が無能なのをいいことに、物資の横流しや麻薬の密売で金を稼ぎ、退屈を凌いでいた。

しかしある日、軍の浄化を掲げる鬼上官のリー曹長(スコット・グレン)が転任してくると状況は一変。「仕事」がしにくくなったエルウッドは曹長の娘をデートに誘い、相手の出方を窺う。ベルリンの壁崩壊直前のドイツで、ルール無用の補給部員と鬼曹長のバトルの幕が、今まさに切って落とされようとしていた。

*出典元:https://casiofanmag.com/

アメリカとソ連の緊張緩和が続き、東西陣営が共に平和ボケとなっていた1980年代末期のドイツ。当時の米軍兵士たちの「反社会行為で退屈を紛らわす日常」を描いたブラックコメディ『バッファロー・ソルジャーズ/戦争のはじめかた』(2001)では、頭が切れる無法者の補給部員エルウッドを演じたホアキン・フェニックス。本作で彼はカシオ データバンク テレメモ30(Ref.DB-34Hを身に着けています。

本来ならベゼルや文字盤にプリントされているハズの「DATA BANK」「CASIO」等の文字が軒並み削り取られているのは、カシオへの配慮なのか。あるいは時代の整合性を鑑みてモデルを特定しにくいようにしているのか、理由は不明ですが気になるところです。

教授のおかしな妄想殺人

IRRATIONAL MAN(2015)

*出典元:https://www.art-kino.org/

ブレイリン大学の哲学科に、世界的に高名な哲学教授エイブ・ルーカス(ホアキン・フェニックス)が赴任してくる。哲学科で学ぶ女子大生ジル(エマ・ストーン)は新任教授の授業を心待ちにするが、当の教授は、友人の死や妻の浮気によって「人生は無意味である」という結論に達してしまい、全てのことに無気力になっていた。

ある日、カフェで悪徳判事の噂を聞いた教授は「その判事を殺す事」に人生の意義を見出し、生きる気力を取り戻す。いきいきとして判事殺害計画の立案に夢中になった教授は、彼の頭の中に殺人妄想が渦巻いているとは知らない周囲の人たちから「明るくなった」と言われ、ジルや同僚の女性教授からモテ始めるが、、、

*出典元:https://www.fromthemovie.com/

生きる気力を失った男が「世直し殺人を行なう」というドス黒い欲望に駆られて気力や活力を取り戻していくという、4年後にホアキン・フェニックスが『ジョーカー』を演じることを予言しているかのような、ウディ・アレン監督のブラックコメディ『教授のおかしな妄想殺人』(2015)。

本作で彼が身に着けているのは、ヴィンテージのオメガ シーマスター(Ref.不明/参考画像)。カジュアルスタイルのカリスマ哲学教授のキャラクターに、ゴールドケースにブラウンの革ベルトという「これぞヴィンテージウォッチ」というスタイリングが、トラッドな大人っぽさを加えています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

エグゼクティヴを装いながら、汚れ仕事に染まる青年を演じた『裏切り者』。殺人の魅力に取り憑かれた哲学教授を演じた『教授のおかしな妄想殺人』。優しさが凶暴性に変わっていく道化師を演じた『ジョーカー』と、二面性溢れる個性的な役柄が多いホアキン・フェニックス。しかし、着用している腕時計はロレックス デイトジャストやオメガ シーマスターなど、シンプルでオーソドックスなモデルという印象です。

これはおそらく「エグゼクティヴ」「哲学教授」という、その人物の「表層」をオーソドックスに演出しつつ、「汚れ仕事」「殺人願望」という「裏の顔」とのギャップも同時に演出できるからではないかと、個人的には考えています。

*出典元:https://as.com/

俳優引退と歌手転向を宣言したり、自分が主演した映画は観ないと語ったり、「アカデミー賞なんかただの出鱈目(bullshit)」と発言したりなど、危うい「変わり者」エピソードも多いホアキン・フェニックス。しかし、その「危うさ」が垣間見える演技もまた、彼の魅力のひとつと言えるでしょう。シンプルでオーソドックスな腕時計を身に着けた、危うい裏の顔を持つ男の役柄こそ彼の真骨頂に思えます。

『ジョーカー』では残念ながら腕時計は着用していなかったホアキン・フェニックスですが、既に製作が決定している続編では、パテックフィリップ カラトラバなどのシンプルな王道時計を着けてくれないかな、、、などと密かに期待している私。「乞うご期待」ということにしておきましょう。

ではまた!

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